パート代と生産性の関係について  配偶者控除の改正について

コンサルタントとして 従業員のこと

 

前回は配偶者控除の改正について、パートさん達からの立場から見た場合について書いてみました。

でも、この話を経営者側から考えてみるとちょっと違う切り口になると思います。

 

今回はこの改正が会社経営に対してどんな影響があるかを考えてみたいと思います。

 

大量生産

 

結論から言いますと、

配偶者控除の改正によってパートさん達は年間150万円まで稼いでも

ダンナさんの扶養家族に入れるという話をしましたが、

これって経営者側から見ると単純に人件費が増える可能性があるという事です。

 

そして、この改正は社会保険関係には関係がないため、

今まで社会保険に加入していなかったパートさんについても、

年間130万円を超えると社会保険に加入しなければいけません。

 

ここで気を付けなければいけないことは、この130万円という金額には通勤費も含めますので、

通勤費を支給している人であれば、実際のパート代はもっと低い金額で該当してしまいます。

 

パートさん達は今までは103万円の壁があったので、自分たちでもそのあたりはコントロールして、

自分の勤務時間を考えていると思いますが、その壁が150万円に上がったという事は、

稼ぎたい人は当然ギリギリまで勤務時間を増やしたいという要望が出てくると思います。

 

 

実は、前回のワンシーンには続きがあります。

 

社長「先生、実際のとここの改正ってパートさん達には有利だと思うんですが、

   会社側としてはどうなんですかね?

   さっきの社会保険料の件といい、何かあまりいいと思えないんですが・・・」

吉田「さすが社長。

   実は吉田も、会社側にはマイナス面の方が大きいかもしれないと思っているんですよ。」

社長「ですよね。

   パート代をたくさんほしいってことはその分長い時間働きたいという事ですよね。

   多分無いとは思いますが、

   仮に全員がそうなってしまったらその分の仕事量があるかどうか・・・」

吉田「確かに、急に受注を増やそうとしてもなかなか難しいですもんね。

   あと単純に仕事量の問題だけでなく、

   パート代が増える分だけ生産性も上がってくれるかどうかが一番問題だと思いますよ。」

社長「確かにそれが一番気がかりになります。

   パート代だけじゃなく社会保険料も上がってしまうとなると、

   ウチの会社の負担もかなり増えますもんね。

   その分をカバーするとなると、かなりヤバいですね」

吉田「まさかパートさん達に

  『会社の利益が減ってしまうから勤務時間は増やさないでくれ』

   なんて言えるはずないですし・・・

   その辺りは受注量と作業内容から生産性を考えて、

   うまくパートさん達をコントロールしないと、

   いいやいいやだと大変なことになってしまいますよね。」

 

なんて話がありました。

 

俗にいう「生産性」って、

簡単にいうと会社の利益に対する人件費のバランスがどうなっているかというお話なんです。

利益が変わらないのに人件費が増加してしまうと、当然生産性は下がってしまいます。

 

今回の件では、パート代の増加に加えて、ただでさえ負担が大きい社会保険料まで増えてしまうと、

会社に与えるダメージって経営者が思っているより大きいかもしれません。

 

人って仕事しているうえで

「今日はここまでやろう」

と思ったら何とか終了時間内に仕上げようという意識が働いて、

その仕事を完了するように頑張ってくれます。

でもその終了時間だけが伸びてしまうと、無意識のうちにも作業ペースが落ちてしまい、

同じ作業量でもだらだらとやってしまって、結果として生産量は今までと変わらず、

でもパート代は増えてしまっているなんてことになりかねません。

 

経営者としては、増えてしまう人件費に対して生産性をどうやって上げてゆくか?

 

まずはこれを第一に考えて、全体の作業ペースが落ちないようちゃんと管理しつつ、

不満が出ることを覚悟しながらもパートさんの作業時間について無駄だと思われる部分は

バッサリとカットするくらいの気概をもって対応することだと思います。

 

パートさん達の作業時間をやりくりするために

正社員の作業を減らしてしまったらそれこそ本末転倒だし、

でもパートさん達も自分が思ったほど稼げないとしたら不満が出てくるかしれないし、

大変悩ましい問題だと思います。

 

 

今回の件もそうですが、人件費をはじめとした「人」の問題については、

パートさん達を含めて社員全員の協力がないとどうしようもない部分だと思いますので、

生産性の悪化が会社のダメージになりそうな場合は、

早めに誠意をもって話し合いの場を作ることをお勧めします。